胸が締め付けられる思い。
私は中学高校生時代、母との仲があまり良くなかった。
私の不登校が原因なのだが、いつもいつも口うるさく学校へ行けという母が苦手だった。
私が中学三年の時、学校に行かないで家でゴロゴロしていた為、勉強が周りに追いついていなかった。
もうすぐ受験という時だ。母は焦っていたのだと思う。
そんな時、家に勉強教材の訪問販売人がやってきた。流石にその人たちの話は上手く、母と一緒に話を聞いていた私も当初はその教材が欲しいと乗り気だった。
しかし、値段が高い。108万位だったか。家は特別裕福じゃなかったからそんなに簡単に出せるお金ではなかった。
そして結局その教材は買わなかった。父と私で話した結果それだったら塾などに行った方がいいという結論だった。
それを母に話した。「やっぱり教材いらない」と。
その時母が渋ったのを覚えてる。買ってみればいいじゃないかと。なんだか不貞腐れてるような悲しそうな表情をして話していたのを覚えてる。
それから高校生になり、母は違う家に住むようになった。いわゆる不倫だ。両親の関係は冷めきっていた。
そして今年に入り、両親が離婚したので母の部屋の整理をし始めた。
そしたらクローゼットの中から沢山の書類が出てきた。
その中に領収書が入っていた。あの教材の。108万もする教材の。
私はハッとした。もう8年も前のことなのに記憶が蘇ってきた。
母は私と父が反対する前にもう既に買っていたのだ。あの教材を。
もうあの頃父と母は仲が良くなかったし、私との関係も良くなかったから、母はそのことを言い出せなかったのだろう。
娘の為に108万物もの大金を使ったのに、それをいらないと言われた時、使われないと分かった時母はどんな思いだったのだろうか。
その報われない思いを今まで私達に一言も言わず、感じさせずにいた母の気持ちを思うと、胸が締め付けられる。